桔吏(きり)の独り言ブツブツ

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なぜいつまでも消費が弱いのか、という問題を説明する有力な仮説である。

90年代に財政政策が効かず政府の借金ばかりが増えたので、2000年代には、もう財政は限界だ、金融緩和でデフレ脱却を目指せ、ということになった。
それから十数年、金融緩和を極限までやってもうまくいかないから、再び財政政策を試してみよう、となったわけだ。
この20年の経緯を忘れたのか、財政と金融の同時実施という昔と同じ話がヘリコプターマネー政策として、まるで新しいことのように議論されている。
90年代の末に論じられた財政問題のテーマの一つに非ケインズ効果がある。
ケインズ効果とは、政府債務が増えすぎると、将 来の財政への不安が高まるので消費が低迷する。
そのとき増税や緊縮財政で財政が健全化すれば、景気が良くなるという仮説である。
日本では97年と14年の消費税増税後に景気悪化が繰り返されたので、近年、非ケインズ効果はあまりはやらなくなった。
しかしよく考えると、97年の景気悪化は消費税より、不良債権が限界に達して起きた金融危機が原因だった。
また、14年からの消費の低迷には、在庫減、冷夏、暖冬などの悪条件が重なっていた。
消費増税が景気悪化の主因だったとは断定できない。
最近では、米ハーバード大学のカーメン・ラインハート教授らが13年の論文で公的債務比率が90%を超えると、経済成長率が1.2%下がると主張し、非ケインズ効果の議論を復活させた。
彼らの主張は 、なぜいつまでも消費が弱いのか、という問題を説明する有力な仮説である。
消費低迷が続いたのは消費増税のせいというより、財政への将来不安が消費税を8%にしてもなお解消せず、むしろ高齢化とともに悪化を続けているからかもしれない。